IPSJ-ONEは、多くの方にご来場・ご視聴いただき、盛会となりました。ありがとうございました。講演の様子はニコニコ動画の 情報処理学会チャンネルで全編(前半・後半)ご覧いただけます!
Twitterでの反響は Togetterまとめをご覧ください。
IPSJ-ONEは,インターネット上で頻繁に見られる「日本SUGEEEEEE!!!(日本すげー!)」の原動力であるような日本の若手トップ研究者たちが登壇し,社会へ強くメッセージを発信するために企画されました.
インターネットやスマートフォンなど情報環境は生活に無くてはならないものとして日常に浸透しています.しかしながら情報学に関する最先端の研究に触れる機会は多くありません.今話題の3Dプリンタも,ウエアラブル技術も,バーチャルリアリティも,学術分野では何十年も前から研究が行われ,その将来像が議論されてきました.現在の情報環境は,研究者にとってある程度予見可能な未来だったわけです.よって現在の最先端研究を知ることは,我々の生活の未来像を透かし見ることに繋がります.「IPSJ-ONE」では,そうした最先端研究を一流の研究者による平易な解説で聞くことができます.
情報処理学会では,現在38分野の研究会にて各分野の専門家たちが日々議論を深めています.今回情報処理学会全体を俯瞰しそのトレンドを探るため,各研究会及びIPSJ-ONE企画・実施委員会による推薦,審査により,分野を超えたインパクトを有する19名の気鋭の研究者を招待し,各5分の持ち時間で弾丸トークを行うイベント「IPSJ-ONE」を開催する運びとなりました.
「IPSJ-ONE」は情報学の専門家だけでなく,一般の方々も最先端の研究を楽しく知る絶好の機会となっています.発表の模様は,会場あるいはニコニコ生放送にて無料でご覧頂けますので,是非ご覧ください.
於 | 情報処理学会 第77回全国大会 |
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日時 | 2015年3月17日(火) 13:00-15:00 |
会場 | 京都大学 吉田キャンパス 百周年時計台記念館 1F 百周年記念ホール |
生放送URL | http://live.nicovideo.jp/watch/lv210755959 |
独立行政法人産業技術総合研究所 情報技術研究部門 メディアインタラクション研究グループ 主任研究員
歌声の音響信号を対象とした「歌声情報処理技術」は,商業音楽の制作における歌声合成や音高補正,カラオケの歌唱採点など,世の中の様々な場面で利用されています.本講演では,歌声の合成と分析に関する研究事例として,人間の歌い方(お手本)を真似て歌声合成できる技術 VocaListener(ボーカリスナー,略称「ぼかりす」)と,歌唱時の表情を真似てロボットの顔動作を生成できる技術VocaWatcher(ボーカウォッチャー,略称「ぼかうお」)を紹介します.また歌声分析に関する最新の成果として,複数の楽器音が含まれる音楽中のボーカルについて,歌手同士の類似度や歌手の性別を推定できる声質分析技術も紹介します.
莫大なデータ,いわゆる「ビッグデータ」の活用に注目が集まっています.しかし,現在のシステムが得意としているのは主に「表」の形で表されるデータです.一方,人間関係,企業間の取引関係,脳,ウェブページ,概念間の関係などといった「関係」のデータの活用には多くの課題があります.本講演では,現実世界の関係に関する興味深い科学的知見を活用しそれらの課題に挑戦する私の研究を紹介します.
様々なセンサ・カメラを搭載した無人飛行機(ドローン)技術が発展しているが,ドローンで都市を見守るためには,バッテリーによる飛行時間の短さや,取得したセンサデータと映像を統合しリアルタイムかつ大規模に配信する手法が確立されていないという問題が存在する.本講演では我々が研究開発した要素技術,(1)24時間飛行可能なドローンシステム,および(2)既存映像配信サービス上でセンサデータと映像を同時に配信する手法,を組み合わせ,都市を半永久的に上空から見守れるシステムを紹介する.また,大災害により地上が破壊された状況でもドローンが自動飛行を開始できるよう,本システムは準天頂衛星を活用するという特徴も有する.
熊本大学 大学院自然科学研究科 助教
近年の情報化社会では,Webやソーシャルメディアの発展,センサネットワークの大規模化などにより,取り扱うデータ量が飛躍的に増大している.そして,大規模な時系列データを効果的かつ効率的に解析するためのデータマイニング技術が非常に重要になっている.本講演では,Web情報,センサデータ,医療情報などを例に挙げ,時系列ビッグデータ解析に関する最先端技術を紹介する.特に,ソーシャルネットワークにおける情報伝搬モデル,Webアクセス履歴データのための情報予測技術,センサデータからの特徴自動抽出技術,疫病データを対象としたテンソル非線形解析など,最新の研究成果を紹介するとともに,時系列解析に関する研究の新しい方向性についても述べる.
大阪大学 サイバーメディアセンター 助教
数学者ノーバート・ウィーナーは1961年に氏の著書「サイバネティクス」で「人間の仕事をやってくれる,新しくかつ最も有能な機械的奴隷の集団を人類が持つことになる」と語った.しかし人類が機械の奴隷となっているのが21世紀の現状であり「運用技術」というプロトコルにより偉大なる機械の恩恵に預かっている.30年後,肉体のみならず知性においても機械が人間を超越する,いわゆる「技術的特異点」(シンギュラリティ)を迎えると言われている.この潮流に対する抵抗は無意味か,我々は同化されるのか,社会的インフラとなりつつあるインターネットとその運用技術の観点から論じる.
IPv4ネットワークでは,ポート・アドレス変換技術によりエンド端末間の直接通信が阻害されている.また,IPv6ネットワークは,IPv4ネットワークとの互換性がなく,エンド端末間が意識することなく相互通信を行うことは困難である.さらに,近年の端末は複数の通信インターフェースを切り替えて利用している.著者らは,IPv4プライベートネットワーク・IPv4グローバルネットワーク・IPv6グローバルネットワーク間のエンド端末間の直接通信と移動透過性を実現可能なシームレス通信技術であるNetwork Traversal with Mobility(NTMobile)の開発を進めてきた.発表では,NTMobileにより実現可能なサービスの紹介と実装概要について説明する.
慶應義塾大学 環境情報学部 准教授/SFC研究所 ソーシャルファブリケーションラボ代表
止まったカタチだけしか出力できない「3Dプリンタ」は,もうそろそろいいように思います.次に来るのは,自由に素材を設定できる「マテリアルプリンタ」,センサやタグ,アクチュエータを埋め込んで好きな量だけデバイスを生産できる「IoTファブリケータ」,出力物が動き,かたちを変え,溶けて消えていくような「4Dプリンタ」などの方向性です.現在さまざまな企業と連携して開発している,創造性を挑発する新しいプリンタ&ファブリケータのプロトタイプ群を紹介します.
九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所 准教授
マッチング問題とは参加者間の「良い」割り当てを求める問題であり,本講演では特に参加者が相手に選好を持つ設定を考える.このような選好を持つマッチング問題は,最も基本的な問題である安定マッチング問題が提案されて以来,その数学的な美しさのみならず実用的な有益性から広く研究されてきた.この問題の特徴的な点の一つとして,経済学,計算機科学,数学といった異なった分野でそれぞれ研究され,また互いに影響を与えながら発展を遂げている点があげられる.本研究では,近年講演者が進めている,選好を持つマッチング問題に対する,離散最適化における抽象概念であるマトロイドを軸としたアプローチを紹介する.
歴史学にはどのような情報が存在しているのか,それらはなぜ歴史学では必要とされているのか,1つの歴史資料からどのような情報が生成されるか,など歴史学(特に日本史学)を取り巻く情報とその利活用を取り上げる.特に,歴史資料の多様な情報をリンクしていくための手法や情報生成のための手法,さらに歴史学的分析を支援するためのデータマイニングの利用について取り上げる.
公立はこだて未来大学 システム情報科学部 准教授
「ピアノの練習はつまらない」「レッスンの日が憂鬱だった」などピアノ演奏の初期段階で挫折する人は多い.ピアノ初学者のスタートアップを支援するために,指使いなどの演奏認識技術,鍵盤へのプロジェクションマッピングによるピアノ演奏学習支援システム,補助情報からの離脱機能による自立支援システムなどを開発してきた.また,提案する学習支援システムを多面的に評価し,学習体験(理解度・学習態度・学習方略など)の変容について調査分析してきた.本発表では,一連の演奏研究を紹介すると同時に,得られた知見を技能全般へと一般化し,技能獲得にかかる時間予測やスランプ予報など新たな学習体験の創出の可能性や,知的創造時代における技能獲得活動の意義について議論する.
ネットワークにつながる世界で身近になったセキュリティとプライバシの脅威.対策は様々なアプローチがあります.しかし対策を適用する人であるエンドユーザやサービス提供者そして開発者たちにとってそれらは「面倒くさい」「難しい」「煩わしい」というところがあります.本当に使いたい・作りたいサービスがある人たちにとっては,『セキュリティ・プライバシをしっかり!』という外部からの声は,敵からの声とさえ思っているかもしれません.そうではないよ.大丈夫だよ.いま大きく注目されている研究分野,セキュリティ・プライバシとそのユーザビリティ.そのユーザビリティについて,暗号技術にフォーカスを当ててその解決に向けたアプローチを紹介します.
単語や句の意味はどのように表現すべきか?意味の表現を自動獲得することは可能か?これら大問題に適切な答えを与えることができれば,構文解析や機械翻訳,質問応答など,自然言語処理の様々な技術に革新をもたらすだろう.近年急速な発展を見せる深層学習はその有力な候補である.本講演では,単語の意味がニューラルネットのパラメタとして表現でき,そうした意味表現が生のテキストから自動学習できることを示す.これによって多様な言語知識や言語直感を自然言語の意味計算に統合できるようになる.画像認識や音声認識のような他の領域における深層学習とは違い,自然言語の深層学習では深さよりもむしろ「幅」が重要であることも論じたい.
独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター 適応知性研究チーム チームリーダー/株式会社ハコスコ 代表取締役社長
ハコスコは,理化学研究所で開発されたSR(代替現実)技術をベースとしたVR体験サービスです.ハコスコを通じて,一般の方々にあまり馴染みのないVRを,誰もが持っているスマートホンを用いて体験出来るようにするための仕組みを提供しています.この仕組みを使うことで,だれもが簡便にVR体験の入り口に立つことができ,さらにはVRを超えたSR体験への導線も準備されています.現実と仮想の境界をいかに自由に飛び越えるか,そのための仕組みをどのように作り上げるのかについてお話します.
静岡大学 大学院情報学研究科 理工系情報学分野 准教授
自動二輪車の世界年間生産台数は自動車とほぼ同数の6千万台であり,特筆すべきはその世界シェアの50%以上を日本の4メーカで占めていることです.車体を傾けて旋回する二輪車は,四輪車と運動が大きく異なるため,独自の研究が必要になります.しかし,先進国では趣味性が高い乗り物として,発展途上国では市民の安価な主要交通手段として使われているため,二輪車分野では未だ情報処理技術が活用されていません.環境負荷が小さく,人間の身体動作に近い二輪車は,未来の移動手段の主役になると期待できます.情報科学的に二輪車を研究し,未来の中心的な交通インフラとしてだけでなく,センシングインフラとしても二輪車を使う私の研究プロジェクトについて紹介します.
近年,スマートフォンの普及と音声認識技術の向上により,音声を利用して対話を行うアプリケーションが注目を浴びている.しかしまだ,こうしたアプリケーションでは人間の秘書やコンシェルジュに話すように自由に対話を行うことが出来ない.こうしたアプリケーションは,明確なタスクゴールを意識した特定のタスクを遂行することによって実現されているが,システムに対する人間の要求は実際には複雑かつ曖昧でゴールを明確化する必要がある.こうしたユーザの要求を明確化しつつ行う対話を情報案内対話と呼び,この実現のためにどのようなアプローチを行ってきたか,またこれからどのような展望が考えられるかについて述べる.
独立行政法人産業技術総合研究所 ゲノム情報研究センター チーム長
生命情報の増加速度はムーアの法則を凌ぐ.この爆発するデータを情報科学の力で解析し,医療・創薬・健康管理の発展へと繋げることが期待されているが,実際にはデータ量に反比例して発見が減る「ビッグデータのジレンマ」がつきまとう.我々は,このジレンマには結果の統計的信頼性の保証に必須である多重検定補正が,現代のビッグデータに対しては,十分な精度が出ないことを見出した.そして,データマイニングの頻出パタン列挙法を応用し,高速かつ精度良く多重検定を補正する無限次数多重検定法(LAMP)を開発した.本講演では,LAMPを紹介した上で,遺伝子情報解析に応用し,乳がん特有の細胞内活動を明らかにした例を紹介する.
リブゼント・イノベーションズ株式会社 代表取締役社長/ライフイズテック株式会社 執行役員CTO
昨今のビデオゲームの表現技術の進歩は目覚しく,映画のCGや実写の映像の水準に徐々に近づこうとしています.現在の動向のご紹介とこれからの他業界への応用の可能性についてお話します.
メニーコア並列アプリケーションと高性能計算機の大規模化が進むにつれて性能への通信遅延の影響が大きくなってきている.例えば,エクサスケールスーパーコンピュータ(スパコン)で期待されるノード間通信遅延は 1μ(マイクロ)秒である.本研究では典型的な既存のトポロジにランダムなショートカットリンクを加えたトポロジを探求する我々のアプローチにより,この数値目標が実現可能であることを示す.さらに,実装に関して1台のスパコンで2,000kmを越えるなどのケーブリング問題の解決策として我々が進めている光無線技術について述べる.
株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所 アソシエイトリサーチャー/Xiborg 代表取締役
人間の身体にはまだまだ隠された機能があります.それを引き出すことによって人間の生活スタイルは激変する可能性を秘めています.損なわれた機能を補うだけでなく拡張することができれば,障がい者,健常者,高齢者の身体機能の境界線がなくなり,すべての人が分け隔てなく体を動かす喜びを感じることができます.さらには,身体能力の欠如に対するネガティブな考え方も変えることができるのです.その事例として,我々のチームが行っているロボット義足や競技用義足等の紹介を通して,人間の身体能力や人間と社会との関係に起こる変革を紹介いたします.そして,我々が考える将来のパラリンピックの理想像についても紹介します.
委員長 | 落合陽一 (東京大学/情報処理学会 新世代企画委員)Web@ochyai |
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副委員長 | 稲見昌彦 (慶應義塾大学/情報処理学会 新世代企画委員)Web@drinami |
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主催 | 情報処理学会 Web@IPSJcom |
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